「はっ! 我々帝国軍遊撃師団は、我等に仇名す異端分子を徹底的に排除し、草の根を分けてでも探し出し、抹殺することにあります!」
「――よろしい、では続けなさい」

 笑顔のままだった。
 だがその笑顔に一同の空気が更に凍り付く、中には気絶しそうになる者まで出始める始末だ。とても冷たい殺気がこの女性から流れ出ているのが分かる程だ。

「カルナック君、君達の弟子は中々優秀のようだね。私は嬉しいよ――楽しくて溜まらないよ」





 帝国軍が馬車の元へと駆け付ける丁度一時間ほど前、大きな荷物を抱えて彼等は斜面を駆け下りていた。ミトには馬があてがわれ、もう一頭には荷物が積まれている。ほどんどアデルの荷物である。
 彼等が目指す場所、それは東に位置するグランレイクだった。ミトの発案で一同はグランレイクへと続く斜面を勢いよく降りていく。

「なぁ、本当にそんなことが出来るんだろうな!?」
「一応出来ると思うけど、この暑さだしどうなるかは分からないよ?」

 アデルがレイの横を走りながら尋ねると、レイも半信半疑のままその案に乗っているように見えた。現状を打破するにはこれが最有力候補としてギズーも納得したが……何分一度も試した事の無い奇策でもある。ガズルとギズーの二人はおそらく大丈夫だろうと判を押した。

「ほーらー? 男の子でしょ? 一度決まったことグチグチ言わないの!」
「そう言ってもよ、いくらレイでも無茶があるんじゃないか?」
「ん~……なんとかなるんじゃない? あっちの二人だって大丈夫だって言ってる位だし何とかなるわよ」
「なぁレイ? 俺が女運悪いのかお前が悪いのかどっちだ?」
「僕にそんな事聞かないで!」