アデルはギズーの剣幕に押されて反論することが出来なかった、しかしギズーのいうことは正しい。
 いくらこちらが手練れの集団だとしても、向こう側に何が居るのか分からない今は下手に動くことはあまりにも危険であった。情報不足にもほどがある。
 仮に練度の低い一般兵士が相手となればそれはたやすく抜けることも可能だろう、しかしこの半年間の間にこんな所に野営地なんて見たこともない。どれほどの戦力がそこにいるのかがわからない以上迎え撃ったり強行突破を行うのは無策と言えよう。
 だが、引き返したところで万が一挟み撃ちに会う可能性も否定できない。だからこそレイは選択を迫られているのである。

「どうするよリーダー、テメェの判断に任せるぜ」

 ギズーはそういってレイを見た。苦悶の表情を浮かべるレイの元へと馬車から降りてきたミトが近づいてくと隣に立って地図をのぞき込んだ。

「ねぇ、このグランレイク? だっけ、縦には長いけど横幅はどんなものなの?」

 突然訪ねてきたミトにギズーが今日何度目かの舌打ちをする。目を細めて睨みつけるようにミトに視線を送った。

「三キロ程だ、南北には十数キロと伸びてるが東西はたったの三キロ程度しかねぇんだよ。それがどうしたってんだ」

 するとミトがにんまりと笑うとレイの耳元で何かを囁く。あまりの内容にレイがびっくりしてミトの顔をまじまじと見つめて。

「ミト? それ本気で言ってるのかい?」

 あまりの作戦内容に驚愕する、だがミトはきょとんとした顔レイを見つめて、もう一度笑顔で。

「もちろん」

 そう言った。