「十時の方向に連峰、それと……三時の方向に湖? かなり大きい奴だ」

 地図を手にギズーも外へと出た、空を見上げて日の位置を確認しギズーから受けた情報をもとに現在地を割り出す。大き目の湖は地図を見ると一発で分かった。中央大陸最大の湖がメリアタウンの東北東に位置する。ここで一度咥えていた煙草を地面に捨てると左足で踏みつぶした。

「『グランレイク』の西、ってことは此処は『グランレイク街道』か。かなり西へとそれてるな、どうすんだレイ」

 呼ばれたレイもようやく馬車を降りた、両手で地図を広げているギズーの元へと歩き地図をのぞき込む。

「本来の行路はグランレイクの東側を通る予定だったけど、戻るとなると結構時間がかかるね」
「グズグズしてられねぇぞ、あっちだって馬鹿じゃねぇ。俺達が気づいてるのはもう知ってるだろうし、早いところ動かねぇと大量のお客さんが来ちまうぞ」

 戻るか強行突破を行うか、はたまた迂回路を探すかの選択を迫られているレイ。そこにアデルが馬車から首を出してたった一言。

「何を悩んでるんだ? 別に迎え撃てばいいじゃん?」

 さらっと言いのけた。

「このピーマン野郎、ショットパーソルぶら下げてる大群を相手にするつもりかよ。この間のアレだって大半が近接戦闘だから簡単に勝てた物を……それに向こう側に法術に長けた奴が居たらどうする? 数で押されて終わりだ」