ギズーの読みは当たっていた、そうなるとこちらの動きは筒抜けになっている可能性が高い。この先で待ち伏せされている事も配慮しなければならないとギズーはもう一度念を押す。

「どこかのタイミングで入れ替わったんだろう、何度か休憩と称して馬車を止めたからな。その時かまたはもっと前、メリアタウンを発つ時か? どっちにしろこのまま進むのは反対だな」

 荷台から顔を出してきたガズルが軽快な身のこなしで荷台全体を覆っている布の上へと上がった。ゆっくりと立ち上がり双眼鏡を手に周囲を確認する。だが現在地は森の中を抜ける街道であり、前方か後方どちらかしか遠くまで見渡せない。今度はアデルが飛び出し手綱を握って一度荒れ狂う馬を何とかなだめ始める。

「どう、どう、どう」

 手慣れた手つきで馬をなだめると、ゆっくりとではあるが混乱していた馬は正常な状態に戻りつつある。そしてゆっくりと駆け回る足を止めた。

「いいぞガズル」

 アデルがガズルに向けて親指を突き出すと同じくそれを返した。同時に馬車の屋根を蹴り少しだけ高く飛んだ。
 もう一度双眼鏡をのぞき込むと、現在地より数キロ先に野営地みたいなものが見えた。木材で囲いを作りその中央に小さな小屋が見える。その周りにはショットパーソルらしきものを構える人間が数名。

「ビンゴ」

 ゆっくりと降下すると馬車の隣に着地した。

「数キロ先に帝国と思われる野営地を見つけた、どうやらコースを大きく外してるみたいだな」

 ギズーの予想はここでも命中する、すると今度は近くに置いてあるバックパックから地図を取り出して広げる。今自分たちがどこにいるのかを明確にする為だ。

「ガズル、周囲に何が見えるかもう一度飛べ」
「人使いが荒いこって」

 愚痴をこぼしながらもう一度空へと飛ぶ、今度は肉眼で周囲を見渡した。