懐から煙草を取り出して口にくわえる、着火剤が見当たらず舌打ちをしたのちアデルを見た。目で合図を受けたアデルは無言のまま右手で指を鳴らすと摩擦熱にエーテルを加え少量の炎を作り出してギズー目掛けて放り投げる。

「だが気を付けたほうが良い、単独だったが追われてたってことを考えればこの先待ち伏せがあるかも知れねぇ」

 小さなアーチを描いて炎がギズーの咥える煙草の先端に落ちる。そのタイミングで息を吸い込み煙草に火をつける。深く吸い込み二酸化炭素と共に煙を吐き出した。
 シフトパーソルを右太ももに備え付けているホルスターにしまうとそのまま壁に寄りかかって両手を頭の後ろに回した。

「なぁギズー、俺にも一本くれよ」
「断る、暫くの間残り本数を気にしなくちゃいけねぇってのにテメェに分け与えるもんはねぇ」

 煙を見た瞬間アデルも吸いたくなったのか懐を弄るが在庫がなかった。ダメもとでギズーに頼むが案の定断られてしまう。

「そんな事より不思議だと思わねぇか?」

 左手で煙草を口元から離すと横目でレイを見た。

「出発前から南支部の動向はずっと探っていたはずだ、何も動きがなかったのにも関わらずなんで今日俺達がメリアタウンを発ったと何故分かった?」

 言われてみれば確かに不思議ではある。わざわざ帝国の南支部を迂回するルートを選んでいるのに何故場所が分かったのか、偶然通りかかった兵士が単独で追ってきたのだろうか? いや、そんなことはあり得ない。元より最低でもツーマンセルで動く帝国兵士が単独で、しかも現状一番の敵であろうFOS軍をだ。

「だからアレじゃね? 一人は追跡を行わせてもう一人は報告に行ってるとか」

 アデルが呑気にそんな事を言うがギズーは即座に反論する。