「ギズーっ!」

 乾いた発砲音があたり一面に鳴り響いた。レイの目の前に出された右手は発砲の反動で少しだけ水平から浮き上がっている。
 発射された弾丸はミトの顔スレスレを横切り森の中へと消えていく。同時に見知らぬ誰かの悲鳴が聞こえてきた。

「え?」

 悲鳴が聞こえた方向に一同が顔を向ける、すると馬に乗った帝国兵が右肩から血を流しながらこちらへと走ってくるのが見えた。

「スライドの最終チェックをしてる時にちらっとだけ見えた、おそらく右手に持ってるショットパーソルが日の光を反射して見えたんだろう」
「それならそうと言ってくれ、突然腕が出てきたときは驚いたよ!」
「妙な動きをしたら撃たれてただろうよ、そこの生簀かねぇ女がな」

 帝国兵は見るに一人だけ、撃ち抜かれた右肩ではもうショットパーソルを打つことは不可能だと悟るが、今度は左手に持ち替えて腕を伸ばす。

「この……餓鬼がぁ!」

 それがこの帝国兵士の最後の言葉だった、彼のこめかみに一発の銃弾が命中し命を落とした。今度はファリックが狙いを定めて精密射撃を行った。ギズーのシフトパーソルとは異なり、こちらは轟音が鳴り響く。

「あなた、私のことが嫌いだったんじゃないの?」

 ミトが心臓をバクバクとさせながらギズーに尋ねた、一方ギズーはそれまでと同じ表情でミトを睨みつけながらしゃべる。

「勘違いするな、てめぇは気に入らねぇし嫌いだ。さっさと消えてくれればと今でも思うね、どうせなら助けずにそのまま見殺しにするもよかった。だが、その軌道上レイがいるから撃っただけだ。だから決してテメェを助けたわけじゃねぇ」