「また巻き割りですかぁ……」

 二人で分担作業を行っている中の作業工程の確認、ビュートは少しばかり遅れている様子ではあったが彼らが到着するのは今日の夜か深夜あたりだろう。まだ慌てるような時間ではないはずの二人が何故ここまで急いでいるのか。それは夕方までに終わらせておきたい事情がある。
 いや、正確にはここまでの作業工程で慌てても良いのかもしれない。前回と同様の人数がこちらへとやってくるのだ、夕方からはアリスだけは食事の支度もしなければならない。ましてや今度はギルドの情報部員も居る。その量は想像をはるかに超えるだろう。

「全く、レイ君も来るなら来るでもっと早く連絡してくれればいいのにね」
「その通りです! いくら先輩でも急すぎます、もっと余裕のある行動をするべきだとボクは思いますね!」
「そうね、でも余裕のある行動はあなたも一緒よ? そんな所で油売ってないでさっさと部屋の準備をするっ!」

 レイ達の帰りを今か今かと待つビュートは知らず知らずの内に顔が緩み切っていた、ゴミを外に運び出そうとしていたが足を止めて何かを妄想している。傍から見ればそれはそれは気持ち悪い笑顔である。それを見たアリスは近くにあった包丁をビュート目掛けて投げると、彼の目の前を通過し壁に突き刺さった。

「……そういう姉さんだってその笑顔は何ですか? 僕は単純に先輩達に会えるのが楽しみなんです。姉さんのその笑顔は先輩に抱き付けるからですよね? 先輩言ってましたよ、それは悪い病気だって! だから早く直した方が――」