彼等がメリアタウンを出発してから幾時が経った頃、カルナックの家ではアリスが目を回す勢いで慌てていた。
 昨夜ギルドを通じてレイから連絡を受けた彼女は団体が来ると知らされてからこの通り朝から掃除やらなにやらと大忙し、同じくその手伝いとしてビュートも修行そっちのけで手伝いをさせられていた。当のカルナック本人はというと……ギルドの情報部員と一緒に彼の書斎で何か作業をしている。

 あの事件以降、カルナックの家から程なくの距離に新しく小さな家が建てられている。家というにはあまりにも質素で小さく、人間が二人共同で生活できる程度の広さしか無い。そこはギルドの情報部員がカルナックと共同でとあることを調べる為に移住する為に建てられた家である。と言ってもほぼカルナックの家で作業をしているので使用するのは寝るとき以外使われていない。食事はカルナック家で済ませている。

 それではアリスの仕事量が以前より増えてしまうのではないかとカルナックは最初こそ断りをしたのだが、ギルドの申し出により食材等は全てこちらで持つと申し出を受けた。カルナックはそれでもと断りを入れようとした所、アリスによって華麗に阻止されてしまった。
 アリスからすれば願ってもない申し出であるのだ、麓の街に出向く必要がなくなりすべて家の中で家事が終わるのである。これにはビュートも同時に喜んでいたという。

 話を戻そう、今カルナックの家では大掃除と一緒に人数分の食器を洗剤したり部屋の確保を行っている。その忙しさは半年前にレイ達が訪れた時以上の忙しさとなっていた。

「ビュート君、部屋のチェック終わったかしら?」
「まだです姉さん、もう少しかかります」
「わかった、でも午前中までに終わらせてね。午後からは君巻き割りだからね」