帝国幹部ですらその歴史をきちんと把握しているものは居ないだろう、古すぎる歴史の中に何があったのかは想像もつかない。もう一つの理由としてカルナックが挙げられた。

「もしくは調べれば分かったのかも知れないけど、今は調べようがねぇんだ、十何年前にそいつらの師匠が書庫毎破壊しちまったからな」
「破壊した?」
「そう、帝国じゃ最悪の一夜だったろうな。これから会いに行く人はかつてたった一人でその帝国を破滅寸前まで追い込んだ張本人だ、現人類最強。俺達が束になってかかっても勝てない人だよ」

 その言葉にレイとアデルの背筋がピクっと動いた、今まで汗一つ書いてなかったレイの顔にこの日初めて汗が流れた。アデルはと言うと多汗症とも取れる量をかいている。それを見たミトが立ち上がろうとした。

「え、どうしたの二人とも」

 真っ先に隣に座っているレイに手を差し伸べようとしたところをギズーがそれを阻止した。彼もまたほんの少しだけ汗をかいている。間違っても暑さで出ている訳じゃないことをここに代弁する。

「今はそっとして置け、ただのトラウマだ」
「と……トラウマ?」