二人は声がした方向に身体を向ける、そこには自分たちと同じぐらいの少年が立っていた、青いバンダナに黒い髪の毛、青いジャケットを羽織って居る。右手にはシフトパーソル、左腰の鞘にはロングソードがぶら下げている。
「そろそろ、俺の出番だろ」
ギズーだった、庭から爆発音を聞きつけ久々に退屈には成らない戦いになると思い城の内部に入ってきたのだ。
「ギズーか」
「あん? 俺の名前知ってんのか?」
ギズーは首をかしげながらシフトパーソルを前に突き出す、アデルとガズルも臨戦態勢に入った。
「待て! 俺達はお前とやり合うつもりはない!」
「うるせぇよ」
ギズーは直ぐさまトリガーを引いた、乾いた銃声音が三発鳴り響いく。アデルとガズルはその場から素早く飛び弾丸を回避する。
「ガズル、ギズーは俺が何とか説得するからお前はケルヴィン領主だ!」
「任せな!」
高く跳躍していたガズルはゆっくりと放物線を描きながら二階の手すりに足を掛け、そこからまた大きく飛んだ。一気に最上階の方へと繋がる階段へと足をかける。
「させるか!」
ギズーはガズルの方向へとシフトパーソルを向けたが、銃口が火を噴く前に自分の手から弾かれた。
「っ痛!」
「話に聞いていたとおりの性格だな、その上シフトパーソルと剣の腕も確かだ。確かに面白れぇ」
「何をさっきからぶつぶつと言ってやがる!」
ギズーは右手を庇いながらアデルから離れた、そして睨む。
「何が目的だ!」
「俺達の目的はお前の奪還、だけど俺は少しお前に興味がある」
「あぁ?」
ギズーが睨む中、アデルは帽子を深くかぶりなおすと口元だけがニヤリと笑う。
「俺と遊ばない?」
「畜生!」
ガズルが大声で、しかも泣きそうな顔で廊下を走っていた。後ろから大きな銃を持った大男が走り寄ってきている。
「アデルの奴、ぜってぇ楽な方を選びやがったな!」
重い銃声音が後方で鳴った、ガズルはその音に反応して身体をのけ反る。ガズルの身体の数ミリ横を大きな弾丸が通り抜けていくが見えた。
「し、死ぬ!」
二発目が鳴った。ガズルは今度こそ避けられないと急に身体を反って右手に重力波を作った。
「落ちろ!」
重力波は大きな弾丸を包み込んだ、だが衝撃を和らげる事ぐらいが関の山だった。弾丸は重力波ごとガズルを吹き飛ばした。
「だぁぁぁぁ!」
ガズルが壁に思いっ切り激突する。完全に泣きっ面の顔をあげて両手に重力波を作り出して起きあがった。
「アデルの……」
またもや大きな銃声音が鳴った刹那ガズルが両手を自分の前方に突き出して腰を深く落とした。
「馬鹿野郎!」
叫びと同時に弾丸はガズルが構える重力波に包み込まれた、今度は両手の重力波で受け止めた為ピタリと弾丸は止まった、その重力波を地面にぶつけ床を粉砕した所で空に浮いている弾丸を左拳で思いっ切り殴った。
「重力反射壁!」
殴られた弾丸は発射される時より数段のスピードで弾かれた、その弾丸は拳銃の発射口にはまって大きな爆発を起こした。大男はその爆発で息絶えた。
「畜生、本気で怖かったんだからな!」