翌朝、まだ日の光が昇る前。メリアタウンが街として目を覚ます少し前から動く人影があった。FOS軍の拠点屋上に一人東の空を見つめる少年。名をレイ・フォワードと言う。
 齢十三にして剣士では最高位の称号『剣聖』を授与された法術剣士。決して彼の力が圧倒的と言う訳ではない、剣聖の名を引き継ぐにはそれ相応の条件が必要となる。まずはその剣技、当然の事ながら剣士としての最高位の称号を授かるからには強さは必要ではあるが剣聖という名は格別『剣士』だからという理由では授かることはできない。

 次に必要となる条件として『類まれな法術使い』も必要となる。これを法術剣士という。法術を使わない剣士での最高位称号は『剣帝序列(けんていじょれつ)』である。もちろん法術剣士もこの剣帝序列の称号を授与できる。剣帝序列とは筆頭から始まり二位、三位、四位までの四人までが存在する。俗に四剣帝(しけんてい)と呼ぶ。圧倒的な戦闘力を誇り、その力は一騎当千とも噂されることも珍しくない。

 最後に人格である。剣聖とは即ち英雄なのである。人格破綻者であっても剣技が優れていれば剣帝序列に入り込むことは可能であろう。しかしその次の称号、つまり英雄と謳われる剣聖に含まれる条件からは外れる。英雄とはどの時代でも民衆の憧れなのである。

「良い朝だ」

 先の剣聖、現『剣老院(けんろういん)』であるカルナック・コンチェルトはまさに英雄であった。レイ・フォワードの師匠であり育ての親でもある。かつて一夜にして帝国を壊滅寸前にまで追い込み、最も帝国から恐れられた男である。