その日、朝の騒がしさ以外特に目立った出来事は起きなかった。
 街の中では住民全員の持ち物検査等が行われたがやはり誰も怪しい物は持っていなかった。もちろん外部からの侵入者等も記録には無い。夕暮れ時になりFOS軍のアジトでは翌日出発するための荷造りが着々と行われていた。 

「そういえば、おやっさんと会うのもアレ以来になるのか」

 アデルが部屋の中で適当に詰めた荷物と格闘しながらボソッと呟く、相部屋のガズルは荷造りを終えて一服をしている。椅子に腰かけてコーヒーを飲みながら愛用の煙草に火をつけている。

「あぁ、もうそんなになるのか。結構近く何だけどな剣聖の家……いや、今は剣老院か」
「近くって言っても徒歩で丸二日だ、遠いと言えば遠いさ」
「でも今回の移動はどうすんだ? あの貧乳達も一緒なんだしそこまでスピードもだせねぇだろ? またスカイワーズ使うとか言い出すんじゃねぇだろうな俺達のリーダーは」

 半年前に初めて乗ったスカイワーズ、登場分配の配慮に欠けていた当時の事を思い出してガズルは拒絶反応を起こす。点火ブースターの二段使用だけでガズルのエーテルはほぼ底をつきかけていたのだ。

「今回は俺にしがみ付いてればいいさ、ブースター点火時のエーテル消費でその日まともに動けなくなるようじゃまだまだだぜ?」
「馬鹿野郎、何が悲しくてお前(アデル)に長時間もしがみ付いてなくちゃいけねぇんだよ。俺はお前と違ってホモじゃねぇぞ」
「誰がホモだよ誰が!」
「お前だよこのホモ野郎!」

 二人の会話は隣の部屋にまで聞こえる程大声だった、右隣の部屋にいるギズーは二人の痴話喧嘩に苛立ちテーブルに置いてあるシフトパーソルに手を伸ばそうとしたが、そのすぐ隣で紅茶を飲んでいるレイに止められた。