レイが見ているのは森だった、先ほどからずっと森の先を気にしている様子だ。だがそこにはいつもの森があるだけで特に変わった様子はない。強いて言うのであれば巨人が倒れた時になぎ倒された木々、それが普段の景色と違っている位である。そこに何かを感じ取っているのかレイは森の一点だけを凝視している。

「おーい、何やってんだレイ」
「……いや何でもない。あ、所で昨夜貸したお金で何買ったんだよ、おいアデルったら!」

 先を歩いているアデルに呼ばれてレイももう一度街へと向けて走り出した。騒がしいとある日のメリアタウンの朝がこうして過ぎていこうとしていた。まるで何も起こらなかったように。