率直なレイの質問に対してガズルが少しだけ声を荒げて答える。それを聞いたレナードもまた強張った表情をしていた。
 それもそうだろう、一体誰が何の目的でアレを回収し運び出したのか。ましてやこの戦時中の事だ、これがもしも帝国による仕業だとすれば貴重な資源を簡単に手に入れたとも考えられる。
 それも現時点では未知の存在であるアレはどこの国にとっても喉から手が出る程の材料だろう。

「有難うガズル君、私は今から本部へと戻り招集をかけることにしよう。各地に検問を張り荷物を全て調べるぐらいはしないといけないな。」
「その必要はねぇさ、さっきも言ったろう? 持ち出すのなんてほんの一瞬だ、何時から無いのかが分からない以上昨夜に消失していたとして十時間以上経過してるんだ。これから検問の準備をして配置につかせたところでとっくにその外側だ。やるのならメリアタウンの全住人位だろうよ」
「ぬぅ……」

 ガズルの言うとおりである、もしも実施するのであればメリアタウン内部に居る全住人にするだけで充分であった。それ以外は既にこちらの知る場所よりきっと外側であろうとガズルが推察した。それもまた間違ってはいない。

「深く考えても仕方ねぇさ、持って行かれちまったモンはどうしようも無い。あんなもん持ち出した所でどうすることも出来ねぇさ」

 ずっと後ろで話を聞いていたアデルが突然口を開く、その言葉に全員がアデルの顔を見た。何事かとアデルは驚いた表情で向けられた顔を睨む。

「だってそうだろう? ガズルが見た事も聞いたこともねぇって代物を現段階でどうにか出来るって俺は思えないし、それに仮に帝国がアレを持ち出して何かしようにも何も出来ねぇんだろ?」