「なぁ、こんなに派手にやっちまっていいのか?」

 ガズルが遠慮がちにやる気満々のアデルの方を見る、アデルは両袖をまくってボタンで留めた。

「何言ってんだよガズル、派手に行こうぜ?」
「俺、お前のそう言う所が嫌いだ」
「そんな事よりさっさと片付けようぜ。ほら来たぞ?」

 アデルは帽子をかぶり直して両腰に付けている剣をそれぞれ手に装備する、やれやれと言いつつもガズルは何時も通りの構えを取る。

「貴様ら! 何者だ!?」

 一人の兵士がそう言った、アデルは笑いながら突進する。

「中央大陸反帝国組織FOS軍だ!」

 低い体制でケルヴィン兵に突撃した、兵隊達は肩にかけていたショットパーソルを脇に構えて乱射してきた。弾丸がアデルの方へと高速で飛ぶ、だがアデルはニヤリと笑って剣を水平に構えた。

「遅い!」

 走る足を地面に吸い付けるかのように止まり水平に構えた剣を勢いよく横一杯に振る、金属同士はじける音が聞こえた瞬間アデルの前に凄まじい量の炎が放射された。その炎は飛んでくる弾丸を一瞬にして溶かした。

「法術剣士だと!?」

 アデルは目の前の炎より少し高く飛び一番近い兵隊へと突っ込んだ、兵隊は手慣れた手つきで銃を投げ捨て腰に差していた剣を手に取る。

「ここから先は一歩たりとも通さない!」
「いや、通らせてもらう!」

 ガズルが左手に重力波を作り出しそれを空に放った、空中に放たれた重力波は放物線を描き途中で止まった、そして一気に爆発する。その衝撃でアデルとガズル以外の人間はその場に倒れこんだ。

「ちくしょう、何だよこれ!」
「う、動けない……」

 ケルヴィン兵達は身動き取れずに自分たちの目の前をゆっくりと歩いてく二人を見上げながら叫んだ、アデルとガズルは楽しそうに口笛を吹きながら第二の城門を開け、中に入った。

「さて、これからどうする?」
「取り敢えずケルヴィン領主をひっつかまえて事情が事情だから説明しないとな、それで断られたら無理矢理にでも連れて行く。その前にギズーに会えればレイの事を話して即連れて行くってのも手だけど」

 アデルが両手に持っていた剣を両腰の鞘に収めながら喋った、ガズルはグローブを付け直してうなずく、そして目の前に数百はいるかというケルヴィン兵達が立ちふさがる。

「貴様達、ここをケルヴィン領主様の城と知っての働きか!」
「あぁ、そうだ。こっちも事情が事情でね、ホントはこんな荒っぽい事したくなかったんだが門番が融通の利かない奴でよ、仕方なくこうなっちまってさ。あんた達も俺達の邪魔するか?」
「ガキが、調子にノリやがって!」

 中央の男が大声で他の兵隊達に命令を下す、大声で一斉に飛びかかってくる兵隊達をガズルが重力波で押さえ込む。しかし一部の兵隊がその重力波をくぐり抜けてアデルの方へと突っ込んできた。

「死ねぇ! ガキ!」
「邪魔だぁ!」

 瞬間的にアデルは両腰に備え付けた剣を両手に掴むとまるで踊るように舞った、右、左、斜め下、剣を振るった。ずたずたに切り裂かれていく兵隊を尻目にアデルは次の目標を決めそこに法術で火炎弾を作り投げつける。

「喰らえ!」

 火炎弾は灼熱の火の玉となって兵隊達の中心部の方に放り込まれた、地面に着床すると同時に辺り一面を爆発で兵士を巻き込む。その爆発で十数名の兵隊を巻き込み戦闘不能にさせた。

「やりすぎだよ、全く」

 ガズルはやれやれと首を振って天井に着き出していた拳を床にたたきつける仕草をした、すると重力波がアデルの放った炎を吸い込みながら真っ赤に色を染めて重力波が地面にぶつかると同時に大爆発を起こした。

火炎重力衝撃(フレア・ビィ・インパクト)

 城内では二度の爆発音でぞろぞろと次から次へと兵隊が集まってくる、だが兵隊達は目の前の光景に恐怖を覚えなかなか動こうとはしない。

「つ、強すぎる」
「こんな奴等を相手出来るのはもうギズー様しか」

 所々そんな言葉が飛び交う、アデルとガズルはつかつかと目の前の階段を上る。しかし途中でその足が止まった。

「やれやれ、たかが二人のガキに何手間取ってるんだよ」