ガズルは自分でも考え付かなかった事を今から喋るのだと思うと笑いが止まらない。それは彼等ましてや世界全土でも珍しい事例になるだろう。ポーチから取り出したのは幻聖石である。

「幻聖石?」
「そうだ、全く持って考え付かなかった事だがこいつに格納したんだ。確かに幻聖石に格納しちまえば重さもなんもねぇ、一瞬で出し入れが可能だ。だがそれには制約がいくつもあるのはみんなも知ってる通り、幻聖石に格納したものは格納した本人しか取り出しが出来ねぇ。そして一度融合したものは他の幻聖石との融合は不可能。そもそも幻聖石事態がそれなりの価格で取引されてるから食料だ建築材料だのってのを格納するには割に合わねぇ。一つの物体につき一つだからな。だからこそ武器なんかを格納するしか大体は使われてなかったんだ。それを利用して持ち運べば――」

 辺りが騒然とした、普段から使い慣れてる幻聖石をそのような事に使うとは思いも寄らなかったからだ。だからこそそれを逆手に利用されたと考えればこの無数に散らばる足跡や森の中へ抜けていく車輪の跡についても説明が付く。幻聖石から目を遠ざける為の偽装工作であると。

「閃いちまえば訳ない事だ、それこして一瞬にして格納できるんだからな。音を立てることも無く本当に一瞬で運び出せるんだからな。目から鱗とまさにこの事だろうよ!」
「そうなると、一体誰がアレを運んだんだろう?」
「それこそ分からねぇ、今言ったろう? 閃いちまえば誰でも運べるんだって。帝国の可能性もあるし西側の可能性もある、考えたくはねぇが東のケルヴィン領主って可能性だって捨てきれねぇ。言っちまえばメリアタウンの住人全員だって可能性はある。これは揉めるだろうな」