「気にしてないよ、続けて」

 本当に咄嗟に出てしまった言葉だったのだろうとレイも咎めることも無く今の状況について詳しい分析を引き続き頼む。ほんの少しの間だけ周りの空気が張り詰めた気がした。

「あ、あぁ……。要するにあのデカブツを運ぶにしたってあのままじゃ駄目だ、いくつかのパーツに分解することが出来れば少人数でも運ぶことはできるだろうけど。それでも人数が少なすぎる、西の蒸気機関って奴ならきっと何とかなるんだろうけど俺も実物は見た事ねぇしな」

 蒸気機関、ボイラで発生した蒸気のもつ熱エネルギーを機械的仕事に変換する熱機関の一部であり、ボイラ等と組み合わせて一つの熱機関となる。そんな技術が西の大陸で発明されているとの噂は兼ねがね、ガズル自身も大学で設計図や模型で見た事のある程度でありどれほどの力を出せるのかは未知であった。

「何にしろ、コレを運んだ奴が一体誰で何の目的で持って行ったのかが謎だな。西側が蒸気機関とやらで持って行ったってのが一番有力だろうよ。……いや待て?」

 ガズルの眼鏡が一度光った、もう一度しゃがみ込むと足跡と車輪の跡らしきものをじっくりと観察する。そして森へと伸びているその線とその先に続く山を見る。ブツブツと小さな声で呟いているガズルの後ろからはやっと起きてきたアデルとギズーが姿を現した。

「ほう、本当にきれいさっぱり消えちまってるんだな」
「馬鹿野郎、呑気な事いってんじゃねぇよアデル。あれだけの質量をどうやって運ぶってんだ」

 二人がそんなことを互いに言い合いながらレイ達の元へと歩いてきた。丁度その時ガズルが勢いよく立ち上がって腰のポーチに手を入れた。

「なるほど、こんな事考えもしなかったぜ」
「何か分かったのか?」