「確かに車輪の跡だと思う、レイの言う通り並の台車じゃねぇな……おそらく鉄で出来た恐ろしく頑丈な台車、それもそれだけでかなりの重量を伴うんじゃないか?」

 三十分後、たたき起こされたガズルが現場に到着して状況を分析する。

「だが合点がいかねぇな、仮に頑丈な台車を用意した所で向かってる先は森の中だ。その先は山になってる、斜面を人力であんな重たそうなもん引っ張ったり押したりして運ぶんじゃこの足跡で推測する人数じゃいくらなんでも無理だ。少なく見積もっても五十人、いやそれ以上は必要じゃないか?」

 眼前に広がる森をガズルが見て、さらに奥の山にも視線を移した。彼の言う通り並の質量ではないあれほど巨大な物体を運ぶにしたって人力でどうにかなるとは思えなかった。だが実際に巨人は忽然と姿を消し、残されたのは車輪の跡と思われる線に無数の足跡、さらにガズルが続ける。

「おい貧乳、あのデカブツについて何か思い出せることは無いのか?」
「だからその貧乳って呼ぶの止めなさいよ! 昨日ミラが関節部分を狙って攻撃したでしょ? あそこが一番もろくて攻撃が届くの、知識さえあれば解体も出来るでしょうけどあんたが言う所の未来だっけ? そんなところから来た物を解体出来る技術が今の時代にあるとは思えないんだけど!?」
「だから聞いてるんじゃねぇか。あーあ、何で俺の周りにいるのはこんなにガサツな女しかいねぇんだ。メルちゃんが生きてたら爪の垢でも煎じて飲ませてやりて――」

 おそらく悪気は無かったのだろう、一瞬しまったと口を両手で塞いで後ろに居るレイを恐る恐る振り返る。一瞬だけ寂しそうな表情を見せたレイだったが暫くするとその表情はいつもの優しい彼らのリーダーに戻る。

「悪いレイ、悪気があったわけじゃねぇんだ」