レイが目にしたのは森の方へと続く細い線だった、ゆっくりと下降しながらその線を追って森へと目を向ける。しかしこの季節の森は緑に覆われていて地面は見えない。耳元の無線機にスイッチを入れてレナードへと伝達を行う。

「レナードさん、森の方へと続く何か線みたいなのが見えました。そちらでも確認できますか?」
「”線? 分かった、確認してみよう”」

 地表では連絡を受けたレナードが森へと顔を向ける、この場所からは確認できないため森の方へと歩き出した。それに続いてミトと部下の一人が続く。抜かるんだ地面が彼らの足に絡みついて中々思う様に進むことが出来ずにいる。

「歩きにくいわね」
「お嬢さんは泥道が苦手かね?」
「好む人はいないんじゃないかしら? ましてや女性ではね」

 靴に泥水が入り足には嫌な感触が残る。そんなぬかるんだ道を歩く度に泥が靴に跳ねてくる、それがとても不快に感じているミトにレナードが茶化す。それを笑顔でいなした。
 レナードもまた自分で言った冗談が世間一般で考えれば確かにその通りだと改め、苦笑いをしながら返された言葉に同意した。

 しばらく歩いた先に森への入り口がある。
 少し手前から太い線の様なものが無数に森へと抜けているのが分かる。起点はおそらく巨人の肩の部分だろう、そこには無数の線と大量の足跡が残されている。この足跡はメリアタウンに駐在している傭兵及び民間兵、ギルドの物ともまた別の足跡だと分かった。
 彼等はギルドから支給されている防具や衣類を身に着けている。これは識別を容易にするためでもある。数乱れる戦場において敵陣との区別を図るためだ、もちろん先に話したタグもあるのだがそれはあくまでも身元を確認するための装飾品であり、全体の大まかな区別をつけるには外見の統一が簡単だった。