「この足跡は傭兵部隊の物だと思う、まだ全体を見ていないので何とも分からんがな」
「レナードさんはこの状況どう思いますか?」
「わからん――だがあんな巨大な物が再び動き出せば音と振動で分かるだろう。しかしそんな報告は一切受けていない。私の部下が居住区へと聞き込みを行っているが口をそろえて『静かな夜だった』だそうだ」
「僕もアジトに居ましたがそれらしい音や振動は感知していません、アレが勝手に動いたという考えは僕にもできません。もしかしたら――」

 彼らが居るのは倒れた巨人の足元、そこから辺りを探るようにレイとミトは歩き始める。レナードもまた彼らの後をついて動き出した。その際工場へ格納した巨人の外装パーツがきちんと残っているかを部下に調べるよう命令して。

「皆も周囲を捜索しろ、何か異変に気付いた者は通信機で知らせる事。散開!」

 レナードの一声で傭兵部隊と民間兵は一斉に散らばった、駆け足をする者や歩く者。様々だがそれに関してレナードは特に気に留める様子は無かった。部下の一人が若干眉間に皺を寄せているようだが。
 ここでレナードの通信機に反応があった、居住区を調べていた部下からの伝達である。昨夜に異音を聞いた人間はやはり一人もいなかったらしい。それを聞いたレナードは居住区以外の区域を調べる様に伝達してレイ達の後を追う。

「どう思うレイ君、あんな巨大な物一夜にして動かせるものかね?」
「人力では難しいでしょう、しかも音もなく街からこんなに近い場所でそんなことが出来るのであれば……何か仕掛けがあると思うんです」
「なるほど、ではその何かとは?」
「それが分かったら苦労しませんよレナードさん」