「とりあえず現場を見てみます、レナードさんもそちらに?」
「あぁ、司令官なら一番前で現場分析をしてるよ。おーい、剣聖が来たぞ。道を開けてくれ!」

 大声で前方を塞いでいる傭兵及び民間兵に呼び掛ける、するとざわつきが一瞬だけ静かになり皆が振り返ってレイを注目した、するとレイの前に一本の道が出来始めた。
 一歩横にずれる男達の中央は花道にもふさわしい一本道が出来る。レイは少しだけ顔を引きつらせて慣れない様子でその道を歩き始める。

「すごいね、レイって本当にみんなに慕われてるのね」
「剣聖の名前が独り歩きしてるだけだよ、僕はこういうの全く慣れない」

 開かれた一本道を歩きながらミトが後ろからレイを茶化す、だが考えてみれば剣聖の二つ名はそれほどの影響力を持っているのは確実であった。

 その道を極めし最高の剣士、それが剣聖。
 カルナックより引き継いだ時もレイは遠慮していたが何より前剣聖(カルナック)による直接的な称号の引き継ぎである。
 最高の剣士に認められた彼もまたその名にふさわしい強さを秘めているのは誰よりもカルナック本人が一番良く理解していた。そう、あのアデルを差し置いて。

 男の花道を進むとその先にはレナードと呼ばれた司令部の統括役が数人の部下を連れて現場を見ていた。レナードもまた後ろの異変に気付き振り返る。

「おはよう剣聖、異常事態だ」
「剣聖はやめてくださいレナードさん、僕には荷が重すぎます」
「はっはっは、それは失敬。では改めてレイ君、コレをどう見る?」

 レナードは右手を伸ばしてレイに差し出す、それを手に取り握手をしてからレイも会釈をしながら現場へと入った。彼の目に映ったのは確かに昨夜までそこにあっただろう巨人が作った凹み、今はどこにも見当たらない。
 地面は昨日の雨でぬかるんでいて周りにはいくつもの足跡が残されている。これは傭兵部隊が巨人を解体作業をする時にできた足跡だろう。