売り言葉に買い言葉、巻き込まれたレイも苦笑いしながら目を細めた。その隣でアデルは笑顔で椅子に座っている、この男は退屈していた日々に久しぶりに面白そうなことが起きていると内心楽しんでいるようだった。

 その日の夜、ある程度の回収作業を終えた傭兵部隊は残りを翌日に回すことにした。撤去できた外装をあらかた回収しそれを郊外の小さな工場へと運び保管する。一仕事を終えた彼等は修復作業もそこそこの街へと戻り司令部に状況を説明して仕事を終えた。
 雨は完全に上がり街の明かりに火が灯る。酒場ではその日の出来事を話し合う傭兵や兵士達の声で賑わっている。中には商人の姿も所々混じっていた。
 そんな騒ぎの中郊外では黒ずくめの何者かが数をなして集まり始めていた。



 その日、要塞都市メリアタウンは怒涛の一日を送ることになった。始まりはミト達が突如としてレイ達の元に現れた事、そして謎の巨人の出現。これが一体何を意味するのか、はたまた何者かによる仕掛けられた罠なのか? それはこの時点では彼等の知るところではなかった。そしてこの日を境に世界情勢は一気に加速を始めることとなる。
 帝国側にも動きが有ったことを知るのは翌日、彼らがメリアタウンを旅立つ日となる。睨み合っている南部支部にもあの巨人の姿ははっきりと捉えられていた。それが何なのか、それは帝国もまた知るところではなかった。

 だが、歴史を振り返ると世界に異変が起きたのはこの日を境だったことは間違いない。レイ達率いるFOS軍、武力国家スティンツァ帝国、そしてケルヴィン領主軍に西の大軍。それぞれの勢力が次第に動き初め歴史は加速を始める。