左手でレイの上着を掴んで引き寄せる、レイがよろけると銃口の先に障害物が無くなり標準が完全に定まった。そして引き金を引いた。

「っ!?」

 完全に殺すつもりで居たのだろう、それだけに自分に起きた事が理解できなかった。確かに引き金は引いた。銃口から硝煙の匂いがする。弾丸が発射され反動(リコイル)も手に伝わっている。それだけに目の前でミトが無傷で立っていることが不思議でたまらない。だがそれは自分の腕の角度と残る痛みで理解した。
 引き金を引く直前、バランスを崩したレイによってギズーの腕を蹴り上げていたのだ。狙いを定めていた銃口はミトの遥か上空へと向けられて空に弾丸を射出していた。

「頭を冷やせギズー、まだ彼女たちの話を聞いてない」
「このお人よしが! こんな得体の知れない奴らを――」

 ギズーの言葉はそこで途切れた、正しくは悶絶して言葉にできなかったのだ。彼のみぞおちにはガズルの右手が突き刺さっている、一瞬だけ隙を見せたギズーに自身の動きを悟られないようにゆっくり、そして静かに動いていた。
 苦しさのあまり右手の力が抜けて地面にシフトパーソルを落とす、腹部を押さえて地面に倒れようとしたギズーをガズルが抱きかかえて押さえた。シフトーパーソルはアデルが拾い上げて腰のベルトに差し込む。

「有難うレイさん、助かりました」
「肝が据わってるねミトさん、ギズー相手にさっきの対応は流石に冷っとしたよ」
「あら? 確信はありましたよ。レイさんが多分何とかしてくれるって」