「どっせぇぇぇぇっい!」

 砲弾が巨人へ無数に飛ぶ中ガズルが巨人の足元に高く飛ぶ、右手に重力球を作り出し振りかぶってそれをぶつけた。だが巨人にダメージが入っているようには全く見えない。巨人の足が動きそのまま弾き飛ばされてしまう。城壁へとまっすぐに跳ね返されてぶつかるとゆっくり地面に落ちようとしていた。だが城壁の石段を左手でつかむとそのまま上へと昇っていく。

「ガズル君大丈夫か?」
「あぁ、でもビクともしねぇぞアレ」

 城壁の上に居た兵士がガズルに手を差し伸べている、それを掴んで最後の段を飛び越え城壁の上へと到着する。右手を見てみると拳の処から流血しているのが分かった。これまで重力球を使っての攻撃でどんなものでも吹き飛ばしてきた彼だったが今回ばかりはあまりにも固すぎる装甲に手を焼いていた。

「痛ってぇな畜生、なんて固さだ」

 ポケットからハンカチを取り出して右手の負傷部分を巻き始める、左手と口でハンカチを縛るともう一度巨人をにらみつけた。眼下にはアデルが走って巨人に向かっていくのが見えた、その後ろにはライフルに法術弾を装填しているギズーの姿も見える。

「アデル! 生半可な攻撃じゃビクともしねぇぞぉ!」

 この雨の中アデルにできることと言えばおそらく剣による斬撃だろう、しかしガズルが先に仕掛けた通り彼の物理攻撃は一切通じていなかった。その中で彼より非力のアデルの攻撃がどこまで通じるのかは不明だ。仮に炎帝剣聖結界(ヴォルカニック・インストール)を発動させたとしてもだ。おそらくアデルは自分の最大火力で攻撃するつもりでいるだろうとガズルは考えていた。

炎帝剣聖結界(ヴォルカニック・インストール)