鳴り響く鐘の音が止んだ時。巨人の沈黙してた機関が一斉に動き出した。歯車の音が聞こえ、関節が動き出す。油が切れている個所も多々見られる巨人は金切り声を上げて稼働し始めた。あれは頭部だろうか、巨人のてっぺんから一度に大量の水蒸気が噴き出した。
 メリアタウンに居る者たちはそれが一体何なのか全く予想が付いていなかった、未知を見上げる彼らの表情は困惑しており、これからこの巨人がどうなるのか、よもや動くのかと見守っているまさにその時に稼働を始めた。民衆はパニックに陥る。商工ギルドや民間軍達が市民の一斉非難を誘導するが街中混乱の渦にある。
 パニックになっていたのは何も市民だけではない、こんな予期せぬ事態に陥った傭兵部隊や城壁の上で大砲を管理している民間兵も何が起きたのか混乱していた。最初に動いたのは巨人の方だった、城壁外に現れた巨人はメリアタウンへと一歩足を動かした、また一歩。ゆっくりではあるがその度に大きな地震が起きる。遠くから見ているレイ達からすればスローモーションでこっちに近づいてくるようにも見える。あまりの恐怖で平静を保てなかった兵士が城壁に設けてある大砲のクランクを回して標準を巨人へと合わせ、トリガーを引いた。

 砲弾は見る見るうちに巨人へと向かい、胸部へと着弾する。一度轟音が鳴り響いた後爆発が起きて巨人が少しだけよろけた。その一発が戦闘の合図にもなった。次々と大砲が発射されていく、曲射弾道で近づくそれは何発も巨人に命中するが余りにも固い装甲に傷はおろかへこみすら付かなかった。

「始まったぞレイ、俺達もいこうぜ!」