この少女もまた記憶が欠落していた、それを聞いたレイはため息を一つついてミトの顔を見つめる。
 改めてみると幼い顔立ちをしている、どことなく死んだメルと重ねてしまう自分が居る。年齢は多分同じぐらいだろう、桃色ですらりと長い髪の毛、大きな瞳で整った顔立ち。美少女と世間一般では言われるだろうそんな少女だった。

「ミトさん、僕達は今帝国と戦争してる最中です、何か身分の証明になるような物はお持ちじゃありませんか? あなた達がどこから来たのかが分かりませんと庇うに庇えないのです」

 近くにあった椅子を手に取ってそこに腰を掛けた、ミトの横で心配そうにレイを見つめるミラに優しい笑顔で返す。彼も鬼ではない、きっと帝国の差し金ではないと心のどこかで信じているからこその笑顔だと思う。何か身分が確認できるものを提示するように言われたミトは自分のバックパックを探している。

「記憶が無いので何の証拠になるのか分かりませんが、もしそれらしいものが在りましたら探してください」

 ベッドの脇に置かれているバックパックを手に取るとそれをレイに手渡した、本人の了解を得てレイはその中を探り始める。見慣れない機器や携帯食料らしき物、見た事の無い様々なアイテムがそのバックパックの中には入れられている。

「どれもこれも見た事の無い物ばかりだ……ちょっと待っててください」

 そういうとバックパックを手に部屋を後にする、ドアを開けた瞬間そこにはアデル達三人が聞き耳を立ててドアに寄りかかっていた彼らが一斉に部屋の中へとなだれ込んでくる。それを見たミトはビクっと肩を震わせた。

「君達――」
「いや、だってよ。気になるじゃんやっぱり」