煙草に火をつけて煙を吐き出しながらレイを睨むのはギズーだ、回りくどい説明をクドクドと続けていたレイにさらにイライラを露にしていた。それを横目で見たレイ本人は苦笑いしながら。

「わからない」

 そう、たった一言だけ答えた。同時に外の雨脚が一層強まり屋根に当たる雨の音が増した。所々雷もなっていてる、昼間なのに薄暗くなった外を一瞬だけ光らせる様に雷はなり続ける。

「で、どうすんだ?」

 あてがっていた氷を下して帽子を被りなおし椅子に寄りかかるアデル、横目で彼等三人が休んでいる応急処置室を見ながら言った。確かにそうだ、何がどうなって彼らが現れたのかは今問題ではない、彼等をこれからどうするべきかである。

「戻ったぞ、とりあえず心配はいらない。軽い打撲程度だろう」

 その扉が開いて中から一人の男が出てきた、FOS軍の全般を管理しているあの医者だった。念のため彼等の容態を見てほしいとレイが頼んでいたのだ、何も心配いらないとホッとした表情で彼は出てきた。

「有難うゼットさん、記憶の方はどう見ますか?」
「そっちはわからんね、私は外科であって心療内科とはまた別なんだよ」

 ゼット、彼の名前だ。東大陸ではギズーを抜かせばその腕は大陸一、しかしそれは外部の損傷や体内構造を専門分野とする。そんな彼が首を振って否定していた。

「とりあえずあの女の子の目は覚めたぞ、行ってやんなレイ君」
「わかりました、ちょっと様子見てきます」

 最後の一人がやっと目を覚ましたらしい、その報告を受けてレイは立ち上がってテーブルにコーヒーを置いた。ジャンパーを羽織ってその場を後にしようとしたその時アデルが唐突に口を開く。

「早く戻って来いよ、お前がいねぇと暑くてしかたねぇ」