一時間かけて山を下り、メリアタウンの拠点へ到着したのと同時に外の天気は雷雨へと姿を変えた。真っ黒な雲が空全体を覆い激しい光を伴って大粒の雨が降る。うだる様な暑さだった外は雨によって幾分か気温が下がり少しだけ快適になる。だが湿度がグンと跳ね上がり今度は蒸し暑さが町全体を包み込んでいた。
アジトに到着した彼らを出迎えたプリムラがお客さんを連れて帰ってきた彼らにため息をついている、事情を聴き奥の応急処置用の部屋をあてがい彼等を休ませることにした。
「記憶喪失ってやつか?」
落下の衝撃で顔面を強打していたアデルがプリムラから氷を受け取り患部を冷やしながら言う、今彼らが居るのはアジトのロビー、それぞれが椅子に座ったり壁に寄りかかったりして休憩をしていた。
「名前だけ憶えていてそれ以外忘れてるって都合がよすぎると思わねぇか? 俺は断固反対だ、即刻追い返した方が良い」
腕を組みながら壁に寄りかかっているギズーが言う、確かにこの内戦の最中見知らぬ人間をアジトに引き入れる事自体が愚策ともいえるのは分かっている。だがレイは首を横に振った。
「危険なのは分かってるけど、多分、帝国の差し金じゃないと思う」
「その証拠は?」
椅子の背もたれに両腕を乗せ、さらにそこへ顎を乗せてくつろぐガズルが問う、そこにプリムラが四人にコーヒーを入れて持ってきた。彼らはそれぞれ受け取ると一口飲み一息つく。