驚きのあまりレイは声を上げた、なんとメルは軽々と霊剣を持ち上げてしまった。今までどんなに怪力自慢でも持ち上げることのできなかった、自分以外にその剣を持ち上げて構える人を見たことがなかった。だが目の前で自分より年下の、それも華奢な女の子が霊剣を軽々と持ち上げてしまった。

「わぁ、なにこれすっごく軽い」
「え、え……えぇぇぇぇ!?」
「でもこんなに軽いと攻撃がとても軽そう……そうだ」

 メルはブンブンといとも簡単に霊剣を振るう、そして何かを思いついたのか近くにあった木々に霊剣を構える。

「待って、そんな大きな木――」

 レイの言葉が言い終わる前にメルは目の前の木に斬撃を入れる。一つ、二つ、三つ、四つ。そのスピードは並の剣士以上の速度だった、スッスッっと簡単に木を刻んでいく。

「すごいね、軽い上になんて切れ味。それに振るう時すっごく力が湧いてくる感じ」

 レイは驚愕した。いや、この現場を目撃すれば誰でも驚くだろう。きれいな太刀筋にきれいな切れ目、すべての斬撃が終わると木は音もなく崩れ、倒れるときにメキメキとほかの木を巻き込んで倒れた。

「ありがとうレイ君、こんな面白い剣使ったことも見たこともないよ」
「……」

 口がふさがらない、霊剣を受け取ったレイはしばらく固まったまま動けないでいた。メル本人も驚いた様子だったがそれ以上にレイの驚きように彼女は笑った。

「あははは、なんて顔してるのよレイ君」

 笑った、ひたすら笑っていた。




 場所は変わって先に合流現場へと到着していた彼ら三人。
 ホテルの屋上、二人の少年と少女が雪降る夜の中立っていた。
 少年は顔を真っ赤にして、少女は戸惑いながら手すりの方へと後ずさりをしていた。例えられない感情とどうして良いか解らない自分の中に有る不可思議な感覚。それが少女の中にはあった。

「……ガズル、君?」

 戸惑いながらも目の前にいる少年の名前を呼んだ、すらりとした身体に黒い髪の毛、そこら辺にいる男よりはずっと格好いい少年は目をそらすことなくアリスを見つめていた。

「アデルには悪いと思ってる。でも、俺はっ!」

 俺は、そこで言葉に詰まった、次ぎにどの言葉を出して良いのかを考えながら……そして戸惑っていた。

「……」

 アリスは黙ったまま屋上を後にした、一人残されたガズルはただ呆然と立っていた。目をつむり親友にゴメンとなんども言葉に出して謝り続ける。それほど悩んだ事だったのだろう。だが、自分の気持ちに嘘は付けなかった。本来ならアデルの事を思い自分は身を引く彼だったが今回ばかりは正直になっていた。

「悪いな、アデル」

 また同じ事を言って手すり越しに幻聖石の光を見た。