手紙の内容によるとメルは人間ではないらしい、二千年前のおとぎ話の中で語り継がれなかったカルバレイセスという女性が作り出した人造人間(ホムンクルス)だという。

 メルは長い時の中世界に漂う幻魔因子を追って彷徨って来たらしい。幻魔因子とは幻魔一族の残留思念の様なもので長い事人前に現れることは無かったのだが近年それを感じ取っていた。

 もちろん先生にもこの話をした、驚いた様子で幻魔について研究を始めるとの事だった。全てがおとぎ話の中の戦争で終わる話ではないと確信したんだそうだ。
 僕にはまだ良く分からない、しかしエルビーは言っていた。幻魔の復活がどうと、そしてあれもまたその一族であると。

 普通に考えればただの世迷言にも聞こえるだろうけど僕達はあの時見たんだ、人間とは異なる異質な存在を。にわかには信じがたい話がその手紙にはそう綴られていた、二千年前に何が起きたのか、幻魔一族がこの星に何をしたのか。そして彼女が見てきた世界の歴史が綴られている。
 
 メルの可愛い字で一つ一つ正確に。所々文字が霞んでいるところがある、きっと彼女の涙だ。

 これをどんな気持ちで僕に宛てたのか、それは今となっては分からない。できれば彼女自身の口からそれを聞きたかった。最後のほうには僕に宛てたメッセージが書かれている、その時は何が書いてあるのか読めなかった。
 涙が邪魔をして視界を歪めてしまう。でも書いてあることは伝わってきた気がする。彼女の文字は確かにそれを綴っていた。