霊剣を逆手に持ち替えてエルビーの体に突き刺しているレイの姿がそこにいた。
 怒りに身を任せ、イゴールの力を借りたまま自身では氷雪剣聖結界(ヴォーパルインストール)を発動させ二重に強化されたその戦闘力。炎帝剣聖結界(ヴォルカニックインストール)時のアデルを遥かに上回る。

「僕が相手だ!」

 霊剣を引き抜くとエルビーから距離を取る、すぐさま法術を詠唱し左手の平を地面に叩きつける。するとそこから魔法陣が多岐にわたり広がりレイとエルビーの二人を巨大な氷が包み込む。腹部の痛みは想像を絶するものなのだろう、距離を取った際に前のめりに倒れたエルビーは中々起き上がることが出来ずにいた。

「この、死にぞこないが!」

 困惑していた、強力な再生能力を持つエルビーは即座に回復させる為細胞を活性化しようとしたが貫かれた場所が壊死し始める。それは(かつ)彼らを全滅寸前(・・・・・・・)にまで追い詰めた一族の姿を思い浮かばせる。

「まさか、そんな馬鹿な! 一人ならず二人も……こんなことがあってたまるもんですか、認めない、認めないぃ!」

 腹部を氷で覆うと勢いよく立ち上がりレイへと走り出す、右手に氷の槍を作り出してそれを投げつける。一直線に飛んでくる氷の槍を霊剣で弾きレイもまた走り出した。そして二人が交差する、

「あああああああぁぁぁぁぁ!」

 レイが叫びながら霊剣を振るいエルビーの体を上下に分割した、勝敗は既に決していた。あの時、レイの体の中にメルのエーテルが流れ込んだ瞬間感じた不思議なエレメント。そして莫大なエーテル量に一時的ではあるがレイは混乱し自我を失いそうになった。それを助けたのがイゴールである。
 流れてきたエーテルにレイ達の心象風景は書き換えられてしまう。同時に二人は感じ取った、それが人間とも魔族とも、ましてや彼等魔人とも異なる別の何かを。