「厄災剣聖結界!」
アデルが契約した名前を叫ぶ、するとレイの体から強大な障壁が展開される。あまりに突然の事にエルビーの腕はその障壁によって弾き飛ばされてしまった。持ち上げらえていたレイの体は地面に着地する事無く滞空し、その障壁を展開し続ける。ゆっくりと地面に降り立つと足元から真っ黒な炎が吹きあがる。
「遅いですよアデル君」
ガズルとギズーな何が起きたのか全く分かっていない、そして耳を疑う。レイの透き通る声とは全く異なる太い声が聞こえてきたからだ。
「レイは?」
「相当のショックだったようで混乱していました、でも今はしっかりしてます」
イゴールが前に出てきたことによってエーテルをリンクさせていたアデルにもエーテルが注ぎ込まれていく。強大なエーテルを受け取ったアデルは立ち上がるとイゴールの横に立つ。この時、イゴールのエーテルを通じてレイの意識がアデルの中へ入り込み何かを伝えていた。
「ふーん、炎の厄災ね。あの時消し去ったんじゃなかったのアデル君? それで、あなた達で私に敵うとでも思ってるのかしら?」
イゴールはメルが握っていた霊剣を拾い上げるとそれを構える。アデルは右手に持つヤミガラスを納刀して戦闘態勢を解いた。
「何のつもり?」
エルビーはその行動をみて首を傾げた、アデルの不可解な行動は後ろで倒れているガズルとギズーも理解できなかった。しかしアデルは別に戦意喪失していたわけではない。
「お前の相手は俺達じゃない」
「何を訳の分からないことを――」
突如としてイゴールの姿が消えた、そして同時にエルビーの腹部に激痛が走った。霊剣が背中から突き刺さり腹部を貫通して突き抜けていた。
「っ!」