「チキショウ、この化け物めっ!」
「あら、さっきも言ったでしょ? 女性に化け物だなんてずいぶんとひどい事を言うのね。それに私には化け物ともシトラって名前でもないのよ」

 謎の生き物は右手を前に突き出すとそこから再び冷風を放った。それにアデル達三人はもう一度吹き飛ばされて何度目かの壁に激突した。

「私は幻魔一族の『エルビー』、ちゃんと覚えておいてね坊や達」

 三人は驚愕した、おとぎ話で伝わる絶望と破壊の王。その一族だとエルビーはそう言った。二千年前に全滅させられたその一族の残党、その言葉を理解することが出来なかった。

「にわかには信じがたいけどなそんな話!」

 ギズーがうつ伏せのまま顔だけを向けてそう言った、それに対して首を横に振って否定しながらエルビーが答える。

「別に信じてもらわなくても結構よ、だって――」

 レイの元へとやってきたエルビーはメルの亡骸を右足で蹴とばし、レイの首を掴んでそのまま持ち上げる。

「どうせここで死ぬんだから!」

 ギリギリと締め上げられるレイの首、しかしレイはそれに対して無抵抗のまま両手をだらりと下げている。表情は苦しさで歪むが何も抵抗する事が無い、それを見たアデルが大声をだす。

「何やってんだレイ! しっかりしろ!」

 その声は届くことは無かった、無情にも締め上げられたその首。意識はある物まるで生きた屍の様にだらんとするレイの体。メルが死んだことで何が何だか分からない状態に陥っていた。

「やべぇぞ、レイの奴もう意識がっ!」

 ガズルが咄嗟に叫んだ、確かにレイの瞳からは光が消えている。それにすぐさまアデルが反応した、意識が無くなったのであれば切り札であるイゴールをレイ本人が呼ぶことは不可能。そして決断する。