アデルが叫びながら一度壁を蹴って距離を取った。ヤミガラスを鞘に戻すとそのままエーテルを集中させる。

「炎帝剣聖結界(ヴォルカニックインストール)！」

　再び足元から炎が噴き出して髪の毛が真っ赤に染まる。そして勢いよく飛び出した。

「喰らえ！　我流――」

　壁のすぐ目の前で勢いよく抜刀する。抜刀の瞬間に生じる摩擦熱を法術で増大させヤミガラスに炎を宿す。その刃から放たれる一撃からは炎が噴き出し氷に襲い掛かる。一つ、また二つと斬撃を放つとそれは大きな炎となってアデルの目の前に現れる。それを無数の斬撃で切り飛ばす。

「炎帝乱舞(えんていらんぶ)」

　炎の斬撃は全て氷の壁へと衝突した。巨大な水蒸気を発生させながら次第に氷が溶け始めた。これなら行けると確信したアデルはもう一度同じ攻撃を仕掛けようとするが彼のエーテルが持たなかった。この短時間で三度も炎帝剣聖結界(ヴォルカニックインストール)を発動させればあの膨大な量を消費する剣聖結界だ、いくら貯蓄量が多いと言われても底を付いてしまう。ましてやコントロールが苦手なアデルにとっては一度に放出される量がレイの三倍以上にも膨れ上がっていた。

「惜しかったわねぇアデル君」

　溶けた氷はその場で再生を始めた。三人はそれを見て絶望する。次の瞬間、アデルとガズルは強烈な冷風によって吹き飛ばされる。それぞれがレイのすぐ近くへと落下する。

「アデル！　ガズル！」

　吹き飛ばされて戻ってくるのを目視したギズーだったが彼もまたその冷風によって吹き飛ばされてしまう。成す術がなかった。人の強さを超えたその力、まるでカルナックを相手にしているかのような感覚にさえ思える。

「ちっきしょう……っ！」