「違うよギズー君、私達の遺伝子が異なるって言いだしたのはギズー君じゃない」

 左手を口元に持って行きながらメルは笑った、確かにそうだった。二人が吹雪の中、東大陸の街で倒れていた時の事を思い出してほしい、治療をしたギズーは血液サンプルからその情報を得ていたはずだ。あまりにも衝撃的な出来事が連続していた為それを忘れていたのだろう。

「僕自身もその剣については良く分かってないんだ、でも確かに父さんは扱えてた。だからアデルの言う通り極一部の人は扱えるのかもしれない。条件はさっぱり分からないけど」

 そういうとギズーの肩を持ち上げて姿勢を治す、だが分からない事だらけなのは何も解決していない。どこから現れたのか、そしてその戦闘力。ナイフも真面に扱えないメルが霊剣だけは自由自在に扱えていた。それがレイにはどうにも引っかかっていた。

「とりあえず先生の事が気になる、一度三層へ戻ろう」

 未だ降りてきていないカルナックの事が気になる、そういって彼らは三層へと戻ろうとした。まさにその時だった。シトラから放出されていた冷気が消え辺りがまた熱くなり始めた頃、再び冷気が彼らを纏う。
 彼らのうち一番最初にそれに気づいたのはレイだった。
 勢いよく振り返ると溶岩に落ちたはずのシトラの死体が壁を這い上ってきていた。それを目撃した瞬間だった、よじ登ってきた体から猛スピードで氷の刃がこちらへ向かってくるのが見えた。咄嗟にギズーの体を後ろに押し出してメルの体を庇おうとした。