レイが叫んだ、それと同時にメルの姿が一瞬にして消える。気が付くとシトラの頭上に現れると振りかぶった霊剣を横に一閃振るう。シトラにもメルの姿はとらえきれなかった。その速度、レイヴンが炎帝剣聖結界(ヴォルカニックインストール)を発動させた時に等しい。しかし彼女にそんな力は無い。
 今まで見てきた彼女には力も技も無い事を知っている。だがそれは偽りだと直ぐに理解した。斬撃を放たれたことで彼女の物理障壁が咄嗟に発動する。一度はそれに妨げられて霊剣の動きが止まるが、次の瞬間ずるりと障壁の中へと入ってきた。

 シトラは驚愕した、レイヴンの残りのエーテルを体内に取り込み、氷雪剣聖結界(ヴォーパルインストール)で法術を高めた彼女の障壁がこんなにもあっさりと破られてしまったのである。体を後ろにのけ反ると首の皮一枚だけを霊剣が霞める、そのままバク転で後退するがメルの攻撃は止まらなかった。

 着地すると同時に縦に霊剣を振るう。まっすぐな直線を描きシトラの頭上に霊剣が迫る。直ぐに障壁と氷の盾を作り出し霊剣の斬撃を防ぐシトラ、そのまましばらく一方的にメルが攻撃を仕掛ける。

「どうなってんだ、メルがあんなに強いなんて聞いてねぇぞレイ!」
「僕にだって分からない、普段のメルからあんな動きが出来るなんて想像もつかないよ」