レイの視界がぼんやりとだけ戻ってくる、そこには小さな人影が巨大な剣を右手にもって立っていた。そのシルエットをレイは知っている。アデル達と冒険を始めて以来ずっと一緒にいた大切な女性。そのシルエットと声が似ていた。

「シトラ・マイエンタ――私があなたをっ!」

 突如として現れたメルの姿にレイ達四人は驚いた、一体どこから現れたのか。何故ここにいるのか、彼女にこの場所の詳しい位置は教えていない。レイ達もカルナックの案内でたどり着いた位だ、この場所を知ったのは家を出てからの話である。それなのに何故彼女がこんなところに居るのか。

「メルちゃん、どうやってここに来たの?」

 シトラの視力も回復してきて視界に入った彼女の姿を見て驚いた。シトラの目に移ったのは白いローブに肩掛けジャケット姿をしたメルだった、そしてその右手に持つ巨大な剣に視線が動く。

「不思議ね、何であなたが此処に居るかってことも分からないけど……何であなたがその剣を持てるのよ」
「……」

 霊剣を握っていた。その体には不釣り合いな程大きな大剣で迫りくる氷の刃を真っ二つに破壊したのだ。未だ理解できずに彼女の後姿を見つめるレイ達、ゆっくりと顔だけ振り返るメルは一言だけ。

「来ちゃった」

 そう笑顔でレイに微笑んだ。左手に結界解除の法術と回復法術を同時に唱えるとそれをレイ達四人に向けて放つ。そしてすぐさま正面を見ると霊剣を両手で握って走り出す、シトラ目掛けて一直線に駆けたメルは霊剣を横に構える。

「メルっ!」