シトラの体から放出されるエーテルが一段と増す、紛れもなく凄まじいまでのエーテル量だ。
 その膨大な量から法術が放たれればどうなるか四人は考えたくも無かった。しかし現実は無情な程現実味を帯びている。次第に周囲の気温が下がり始めて吐く息が白くなる。それまで溶岩の熱で汗を掻くほどだったのにだ。

 シトラから放出される冷気が一層強さを増し始めた。

「それじゃぁ、皆さようなら」

 最後に微笑むと彼等四人の元へと氷の刃が襲い掛かってきた、地面から付きあがる氷はシトラの体から前へ前へと突き出してくる。徐々に距離が詰められていきレイ達の目の前にまで迫ろうとしたその時。レイの右手人差し指にはめられた指輪が突如光りだした。
 その光にレイ達四人はもちろん、シトラの視界を奪う。

「レイ君、大丈夫だった?」

 目の前に迫ってきた氷の刃は突如真っ二つに割れた。レイの処へ向かってきた物だけじゃない。四人全員の目前に迫ってきた氷が全て真っ二つに割れていた。

「もう大丈夫だよ」

 レイの視界がぼんやりとだけ戻ってくる、そこには小さな人影が巨大な剣を右手にもって立っていた。そのシルエットをレイは知っている。アデル達と冒険を始めて以来ずっと一緒にいた大切な女性。そのシルエットと声が似ていた。

「シトラ・マイエンタ――私があなたをっ!」

 彼女の名前はメルリス・ミリアレンスト。普段の彼女からは想像もつかないエーテル量を携えて彼らの前に現れた。