冷静に話し始めた、両手を広げて法術を詠唱すると氷の槍が二本出現した。
 それをまず動けないでいるガズルに向けて投げる、続けてギズーにも投げつけた。放たれた槍は地面に直撃しガズルとギズーの体をを凍らせて身動きが取れないようにした。
 続けてもう二本作り出すとレイとアデルに向けて投げつける。レイは何とかその場に立っていたが放たれた槍は左肩に突き刺さりそのままもう一度壁に張り付く形になる。同時にその場霊剣を落としてしまう。アデルはフラフラに成りながらも立ち上がったが左足に槍が刺さる。

「急に何だってんだ、さっきとはまるで別人じゃねぇか!」

 左足に突き刺さった氷の槍を引き抜きながらアデルが叫ぶ、突き刺さった場所は急速に温度が下がり凍傷となる。

「分からない、でもレイヴンが倒れた直後にシトラさんのエーテルが爆発的に増加したんだ。それも――」

 レイの瞳にはしっかりと映っていた、シトラの体に纏わりつく異常なまでのオーラを。体内のエーテルが溢れ過剰に放出されている。

「おそらくレイヴンのエーテルだ、きっと何方(どちら)かの生命活動が停止した時に残りのエーテルを全て譲り渡すって契約でも結んでいたんだろう」

 体と地面が氷によって塞がれているガズルが冷静に分析をする、それを聞いてギズーが思わず笑ってしまった。

「冗談じゃねぇ、そんな事できるわけが――」
「いや不可能じゃない、普通そんな事する奴なんていねぇけど」

 アデルは知っていた、レイの深層意識の中で起こった出来事を思い出す。他人にエーテルを分与することは可能であると。厄災がアデルにしたのと同じように。そしてこの局面を打開する解決策を模索する。レイも同じことを考えているだろう。この局面において彼らに残された策は残り限られている。

「おしゃべりはもう済んだかしら?」