必死に抵抗するレイだったが抗う事の出来ない程の重圧だった、氷雪剣聖結界(ヴォーパルインストール)を発動している時は通常の法術障壁より格段に術式が上がっているにも関わらずだ。その重圧は恐怖を植え付ける。

「……」

 シトラはゆっくりとレイヴンの死体に目を向けた、ピクリとも動かないことを確認し絶命したのだと悟った。そして再び四人に強烈な精神寒波が襲い掛かる。
 いつしかカルナックが見せた衝撃波を伴った物とよく似ている。とても冷たい殺気も同時に混じっていた。レイ以外の三人はその衝撃によって三度壁へと吹き飛ばされる。何とかレイだけはその衝撃波だけは(・・・)受け流すことが出来た。

 そして次は無いと覚悟する。

「――ありがとうレイヴン、後は私一人で何とかするわ」

 するとシトラの姿が消えた、その直後レイの腹部に衝撃が走る。瞬時にレイの元へと移動したシトラはレイの腹部を蹴り飛ばしたのである。それは予想だにしていなかった。これは剣聖結界の恩恵ではない。シトラ本人の身体能力の高さだ。

 これで四人は揃って壁の方へと弾き飛ばされてその場に倒れてしまう。

「やっぱり化け物だあの女っ!」

 ガズルが地面にひれ伏しながらそう叫んだ。そう、最初にシトラの恐怖を知ったのはガズルだった。ケルヴィン城で植え付けられたその恐怖を思い出していたのだ。

「失礼ね、女性に向かって化け物だなんて――」