循環再起動(エーテルリブート)

 一度放出され消費したエーテルがアデルの体の中に戻り始めた、そして再び髪の毛が真っ赤に染まり足元から炎が噴き出る。体にかかる負担は計り知れないがアデルは短時間の間にもう一度炎帝剣聖結界(ヴォルカニックインストール)を発動させることに成功した。それは炎帝より授かった彼のとっておきの一つだった。
 静かに見守っていたシトラがとっさに援護しようと法術を練る、だが同時にレイもまた同じ法術を練り始める。アデルから口頭だけで伝えられた情報を元に構築される法術。

絶対零度(アブソリュート・ゼロ)」「絶対零度(アブソリュート・ゼロ)

 二人が同時に法術を唱えた、氷点下二百七十三度の空間を作り出し一瞬のうちに相手を凍らせる結界だったが両者の法術はその中央で激しくぶつかり合い相殺される。ぶつかり合う極限の温度は互いにぶつかると対消滅を起こした。その直後レイとガズルはシトラへと跳躍する。
 右肩を砕かれたレイヴンにはもう刀を握るだけの力が残されていなかった。視界もまだ戻っていないレイヴンは咆哮する。仕留めきれなかった自分の未熟さに嫌悪し自分より優れた戦闘センスを持つアデルに嫉妬した。しかしレイヴンは最後の悪あがきに出る。握ることも出来なくなった刀が右手から落ちるとそれを左手でキャッチする。逆手に握った刀をアデルが居るであろうその空間に向けて切り上げた。

 確かにそこにアデルは居た。

 しかしその攻撃をアデルは見切っていた。

 ギリギリの処で刃を避けると剣先が帽子に当たり二個目の切れ目を作った。ほんの数ミリの切込みがアデルの帽子に残りそれを手ごたえと勘違いしてしまう。アデルはその体制のまま刀を鞘から引き抜く。

「一つ!」