残り二秒、レイ達はついにアデルの姿だけをとらえることに成功する。その瞬間レイの表情が青ざめ始めた。未だ高速で移動しているであろうレイヴンの姿をとらえることが出来ないからだ。
 徐々にアデルの体から鮮血が飛ぶのが見え始める。

 ラスト一秒。

 ついにアデルの動きが確実に視界にとらえることが出来る程落ちていた。それを見てレイヴンが確信する、もうこれ以上アデルには力が残されていないと。
 その判断からとどめを刺そうと細かい剣激が大降りに変わり始めた。

 それをアデルは見逃さなかった。

 炎帝剣聖結界(ヴォルカニックインストール)が切れるその直前、アデルがこれまで防御に徹していたスタイルから攻撃へと転じる。切れる直前、彼がとった行動は誰にも思いつかない奇策であった。大ぶりの攻撃を視界にとらえるとレイヴンの姿も露になり始めた。それが決定打となる。
 大ぶりの攻撃を刀で受けることなく体を捻って避けたのだ。それまですべての攻撃を打ち落としてきたアデルは初めてレイヴンの攻撃から体を逃がした。そして同時にエーテルを刀に集中させて地面に突き刺す。

「逆光剣!」

 まさかの奇策、それは逆光剣である。
 突如として目の前に猛烈な光が現れレイヴンの視界を奪ってしまう。目がくらみ何も見えなくなったレイヴンはアデルの殺気だけを頼りに攻撃を受けようとした。
 そこにギズーが動いた、ライフルを握りしめると弾丸を一発装填する。レバーに人差し指だけを掛けて前方に向けて銃身を放り投げる。その直後ひっかけていた人差し指を手前に引くとその反動で銃身が戻ってきて弾丸が装填される。戻ってきたライフルはそのままレイヴンへと銃口を向けてトリガーを引いた。
 発射された弾はレイヴンの右肩に直撃し骨ごと破壊する。そこにアデルは勝機を見出す。ふらりと倒れそうになる体に鞭を入れて炎帝に教わった剣聖結界とはまた別の技を発動させた。