「えぇ、手に取るようにわかります。ですがあなたに私のスピードに付いてこられますかな?」
そう告げるとレイヴンの姿が消えた、同時にアデルが炎帝剣聖結界を発動させる。そこからの五秒間、二人の攻撃はその場にいる全員の視界で捉えることが出来なかった。先に動いたレイヴンは先に抜刀しアデルの胴体目掛けて斬撃を放つ、それに合わせてアデルも抜刀する。
激しくぶつかり合うその刃からは衝撃波を伴い周囲へと吹き荒れる。二発目、それも互いに打ち合い相殺する。アデルにはしっかりとレイヴンの攻撃が見えていた。スローモーションにも捕らえられるその動体視力、短期間でよくぞここまで練り上げたとレイヴンが感心する。
しかし二人の攻撃はもちろんゆっくり放たれているものなんかではない。カルナックほどではないがそれに等しい速度で刃が飛び交う。レイヴンが急所を狙って斬撃を放てばそれをアデルが見切って叩き落す。そんな攻防がしばらく続く。
決定打をお互いに浴びることも無く、与えることも無く繰り返される無数の斬撃。聞こえてくるのは激しい金属音が重なって永遠と流れ続ける。だが優勢なのはレイヴンである、彼のほうがほんの一瞬だが先に動いただけあって攻撃の主導権を握っている。
確実にアデルは防御側に回っていることを自覚しつつも一瞬の隙をついては攻撃を仕掛けようとするがそれも叶わないでいる。この間まさに二秒、徐々にアデルの動きに乱れが出てきた。
体が悲鳴を上げ始めているのが分かる、次第に攻撃速度が遅くなりレイヴンの攻撃をさばききれなくなっていく。すると一太刀、また一太刀と体に傷を負い始めてきた。