そう言いながらレイヴンが四人に近づいていく、一度刀を納刀してゆっくりとこちらへ歩いてくる。まさに恐怖そのものだった。先ほど与えたダメージはどこへやら、完全回復した今のレイヴンにダメージを負っている彼等四人はどうあがいても勝てそうになかった。しかし、ここで奥の手を出していいのかレイは悩んでいた。そう厄災剣聖結界である。確かにイゴールを前面に出せばこの局面を乗り切れるかもしれない。しかし、今がその最大の危機なのだろうか? まだ何かできることがあるのではないかと思考が錯誤し始める。そんなレイに起き上がったアデルが肩を叩いた。

「まだだ、まだその時じゃない」

 心を読まれていた、知らず知らずのうちに顔に出ていたのだろう。それを悟ったアデルが首を横に振ってレイの前に出る。グルブエレスとツインシグナルと鞘に納めると腰のポーチから幻聖石を取り出した。それを左手で握るとヤミガラスを具現化する。

「インストーラーデバイスですね、やっと本気になってくれましたかアデル君」

「別に手を抜いてた訳じゃないんだけどな、最初に使っちまうと後に響いちまうからよ。とっておきってのは最後の最後まで取っておくもんだろ?」

 そう啖呵を切って抜刀の構えに移行する、それを見たレイヴンも一度鞘に納めて間合いギリギリのところで立ち止まった。シトラはそれを後ろでじっくりと観察しているように見える。レイ達三人もアデルの行動を見守りつつシトラを警戒していた。

「同じ流派だ、何をするかってのは分かってるんだろうレイヴン」