右腕を振り上げて最後の一撃を放とうとするエレヴァファル、後は振り下ろすだけで満身創痍のカルナックを仕留めることが出来る。しかし、彼はその腕を振り下ろすことはなかった。

「貴方があの世で、詫びて来なさいっ!」

 腕を切り飛ばされてからのカルナックの動きは恐ろしかった。防御体制を取ったあの瞬間彼は左腕で抜刀し逆手で刀を握っていた。しかしカルナック自身まさか自分の防御力が打ち負けるとは思いもよらなかった。一瞬だけ自分の腕が切り飛ばされたシーンが目に焼き付き激痛で軋む体に鞭を入れ体を捻る。そのまま逆手で持っている刀をエレヴァファルの一か所だけ防御が剥がれた処へと刀を滑り込ませた。その場所こそ人の急所の一つ。心臓だった。

「……てめぇ」

 口から血が溢れる、ガクガクと揺れる体と遠のく意識。心臓を一突きにされてなおこの男は生きていた。脅威の生命力だった。カルナックは刀を持つ左手に力を入れさらにねじ込む。

「――あぁ、やっぱり強ぇなお前は。それでこそ俺が認めた男……だ」

 狂気に染まっていた笑顔に穏やかさが見え始めた。そして完全に心臓を破壊されたエレヴァファルはこの時、ようやく絶命した。巨大な体躯がカルナックの刀にのしかかってくる。ゆっくりと刀を引いて体を元に戻す。つっかえが無くなったエレヴァファルの体はそのまま地面へと倒れた。

「さようなら、親友(ばかやろう)――」

 背中越しにエレヴァファルにそう告げ納刀する。いつしか森羅万象現人神(エレメンタル・インストール)の効果も切れている。彼にもはやこの先戦うだけのエーテルは残っていなかった。膝から崩れるとカルナックもまたうつ伏せで地面に倒れこむ。

「すみませんレイ君、少しだけ休ませてください」