この時点でエレヴァファルはカルナックの斬撃に対処することが出来ていない。体に多少なり傷が付き始めたのは二つ目からだ。

「三つ!」

 この時カルナックの体に異変が起きていた、現人神結界を施して尚六幻を放つ負担がカルナックの体を苦しませる。あまりの攻撃速度に彼の体が悲鳴を上げ始めた。体のいたるところから血管が破裂し皮膚が切れてそこから流血し始める。

「よ、四つっ!」

 まだ決定的な攻撃が入っていない事と体に襲い掛かってくる激痛に顔が歪む、あまり長くこの状態を続けるわけにも行かないカルナック。この先の戦いもまだ残っているのだ。

「五つっ!」

 此処でやっとエレヴァファルの体に異常が見え始めた。体を覆う鋼鉄の黒い物体が剥がれ始めたのだ。その一点に最後の奥義を叩きこむ。

「六幻!」

 六つの剣閃は見えた肉体へと集まり命中する、そこから血しぶきが舞いエレヴァファルは初めて痛みによって表情を変えた。しかしカルナックもまた体の限界を感じていた。この状態で六幻を放てば体の細胞が破壊される可能性もある、それを承知で放った奥義だったが致命傷を与えることは出来ていない。ガクンとカルナックの速度が落ちた。その時初めてすべての斬撃音が重なってその場に爆音となり鳴り響いた。

「今度は耐えたぞ、カルナックぅぅぅっ!」

 斧を左下から振り上げる、咄嗟にカルナックは防御力を高めてその攻撃を右腕で防御しようとした。

「獲ったぁ!」

 その瞬間、カルナックの防御力をエレヴァファルの攻撃力がほんの少しだけ上回った。カルナックの右腕は切り飛ばされ、ひじの少し上の処から鮮血が飛び散る。この瞬間エレヴァファルは勝利を確信した。利き腕を飛ばされた過去の自分をカルナックに重ねて歓喜する。

「終わりだカルナック! あの世の餓鬼たちによろしく言っといてくれ!」
「そうですね、あの子達に――」