「船が爆発したぞ! 救助班急げ!」

 アデル達が船から飛び降りてまもなく大きな炎と共に爆発した、とっさの事でアデル達は何が何だかよく解らないで居る。

「ありゃ……燃料貯蔵庫に引火したな?」
「いや、たるに入っている酒などのアルコール物に当たったと考えても良いだろうな」

 二人は帝国兵に気付かれないように船の底を潜るように泳いだ、その間二人は口パクでお互いが言いたい事を存分に言った、それを解釈して互いに答えを口にする。

「ぷは、それにしてもこの後どうする?」
「どうするって言ったってなぁ。取り敢えず上陸するのが頭の良いやり方だろうな。こんな冷たい冬の海に何時までもつかっているなんて体力の消耗の元だ、それでなくてもあのレイヴンとか言う野郎に叩きのめされて疲れ果ててるってのによ」
「レイヴン。あいつは一体何者なんだろう」
「しらねぇよ、とにかく上がろう」

 ガズルは海の中で残っている力一杯重力波を水中にはなった、その反動でざぶんと音を立てて陸に上がると腕を伸ばしてアデルを引きずり出した。

「うぅ、寒い!」

 アデルはぶるぶると震えながら全身水浸しに成った身体を振った、その行動はまるで犬がびしょぬれになった時に身体をぶるぶると震わす行動と似ていた。

「冷て、お前も法術剣士(エレメンタルブーレド)なら何とかして炎を起こしてみろよ」
「無茶言うな、アレだって相当のエーテルを使うんだぞ。そう易々と出来る物じゃないんだ」
「じゃぁ、何でレイヴンはいとも簡単に炎を出したんだよ?」
「俺が聞きたいぐらいだ、それにあの移動速度は尋常じゃない。俺がまだ教わってなかった法術の一つだろうな。まったく、おやっさんはやってくれるよ」

 アデルはそうぼやくと辺りを見回す、そこはグリーンズグリーンズの商店街通り中央、路地裏に位置していた。

「取り敢えず何処かに入って暖を取らして貰おう、こんな所にいたら凍え死んじまうよ」

 二人は歩き始めた、ずぶぬれの衣装を引きずりながら歩きアデル、長ズボンがグッショリ濡れているガズル、二人は少し歩いた所の廃屋を見つけた。そこの扉をノックし誰もいない事を確認した上でドアを開けた。

「ん、比較的暖かいなこの中」
「そうだな、何が原因だろう」

 この空間が何故暖かいのかを捜索しているガズル。
 軽く周囲を見渡すと小さな暖炉があった、ほんのりとだが微弱なエーテルが感じ取れる石が一つ暖色に輝いている。

「……成る程な」
「何か解ったか?」

 ガズルの視線の先にアデルも顔を向ける。

「なんだこれ?」
「はぁ? お前アレが何か解らないのか?」

 戦闘以外に関しては全くの無知であるアデル、それは一緒に居るガズルにとって悩みの種でもあった。旅を続けるうえで必要な知識が欠落しているのだ。

「アレはだな、幻聖石の一種で陽光石って言う珍しい石なんだ。その石は炎のエレメントで固められた一種の法術体、この陽光石から発せられている微弱な法術のお陰で暖を取れるって訳だ。因みにこんな所に有るのは不思議でしょうがない」

 淡々と説明する中アデルは最後の言葉に少し悩んだ。そして驚いた口調でガズルの腕を掴む。

「馬鹿、自然的にこんな所に有るわけ無いんだったら人工的に有るって事だろう!
 誰かここに住んでたりするんだよ、早く逃げるぞ!」

「その必要はないわ!」

 突然ドアが開いた、そしてそこには銃を構えた一人の少女が仁王立ちしている。

「あなた達は誰!」
「……何でお前と一緒だとこうも面倒なんだ?」
「知るか、取り敢えず撃たれないようにしろよ、こっちは何も構えてないんだ」

 二人は眉一つ動かさずに銃口を向けている少女の目を睨んだ、そして少女がアデルの足下に一発弾丸を飛ばした。

「答えなさい、あなた達は誰!」

 アデルはまだ濡れたままの衣装で床にドカッと座り込んだ。

「中央大陸グリーンズグリーン北部の町ケルミナより離れた所に拠点を持つ義賊『カルナック』の初代頭、アデル・ロードだ」
「同じく義賊カルナックの右腕、ガズル・E・バーズンだ。君は?」
「私の名前はアリス『アリス・キリエンタ』よ。こんな所で何してるの? まさか私のお金を盗もうとしてるんじゃないでしょうね?」
「おいおい、今も言ったが俺達は義賊だ。平民から金なんてもぎ取ろうとしないぜ?」

 ガズルが笑いながら冗談交じりに言った、だが次の瞬間ガズルの顔脇すれすれを弾丸が一発通り過ぎていった、サーと青ざめていくガズルを横目にアデルが話しかける。

「あんた、この町の出身か?」
「違うわ」