大男がそうぽつりとつぶやいた瞬間カルナックがその距離を途轍もないスピードで縮めた、カルナックは初段で決めるつもりでいた。戦闘を長引かせるとこの後の消耗に響くからだ。一撃でこの男を沈めてすぐさまレイヴン達の後を追うつもりでいた。が、その考えはすぐさま打ち破られる。
 初見であれば見切れるはずのない神速の抜刀術が大男の持つ巨大な斧によって塞がれていたのだ。

「なっ!」

 初段を防がれてしまったカルナックは一瞬だけ混乱したがすぐさま後ろへと飛ぶ。今の一瞬何が起きたのかカルナックは理解できなかった。

「そうかてめぇか、久しぶりじゃねぇか――」

 その言葉が耳に届いた時、カルナックの目の前には距離を取ったはずの大男が斧を振りかぶってこちらに振り下ろす姿が目に映った。
 後ろに居た四人はこの男が何をしたのか、どうやって瞬間的に移動したのか全く見えていなかった。振り下ろされる斧をカルナックは刀で受け止める。その衝撃は刃同士がぶつかった瞬間に強大な風圧と共に二人の間を駆け抜ける。

「よう――『最強(カルナック)』!」

 大男の顔が間近に迫っていた、その顔を見た瞬間カルナックの心臓は一度ドクンと高鳴った。そのまま視線を右腕へと移す。

 その右腕は義手だった。カルナックはこの男を知っている。

「やぁ――『最狂(エレヴァ)』」

 エレヴァファル・アグレメント。
 帝国軍特殊殲滅部隊隊長、かつてカルナックと共に世界を駆け巡った戦友の一人である。
 そして、過去に一度カルナックが一夜にして帝国を壊滅寸前まで追い詰める原因を作り出した張本人である。

 だがしかし。

 この男。

 間違いなく強い。