階段を下り続けてまたもや五分ぐらいは経っただろうか、一向に第三階層の入り口が見えてこない。そういえばここは海底洞窟とカルナックが話していたことをレイは思い出した。ふいに立ち止まると周囲の壁をじろじろと見渡し始めた。

「先生、すごく不思議なんですけど。ここが海底洞窟というのなら何故海水が壁にしみてこないのでしょう? これだけ下りれば水圧によってこんな空間崩落してもおかしくないと思うんですが」

 言われてみればそうだった、推定で八百メートルは下っているだろうと思われる。流石にそこまで下ってくれば水圧の負荷によってこんな空洞崩落してもおかしくはない、付け加えるのであれば気圧の変化も見られなかった。それがレイにとってはとても不思議に思えた。

「この洞窟が作られたのは今から二千年も昔です、当時の技術は今の技術より高度であり何より魔術が猛威を振るっていた時代です。この洞窟から感じ取れるこの気配からすると何らかの魔術が掛けられているのでしょう、私達には一切分かりませんが」

 カルナックもまた良く分かってはいなかった、勝手に歩く書庫と呼んでいたアデルが思わず振り返ってしまう。カルナックが知らないことが本当にあったのかと驚いていた。だがアデルはすっかり忘れている、数日前にカルナックはガズルの重力球の事が分からないと言ったばかりであることを。

「そういえば法術の結界を発動させるときに用いる魔法陣って、元をただせば魔術何ですか?」