「あの洞窟は何階層かに分かれています、その最深部こそが名前の由縁だそうです。私も一度捜索に出向いた時に拝見しましたが名前の通りでした」

 一度だけ見た景色を言葉にして伝えるが余りにも抽象的でパッとイメージがし難い。

「階層って、あの先は海ですよね? まさか海底洞窟ですか?」
「その通りですレイ君、流石ですね~」

 そんな会話が耳元から聞こえてくる、先も述べたがこの通信装置は本当に素晴らしいものだった。
 離れていてもリアルタイムで伝達が行える上、作戦を相手に聞こえない程小さな声でも装着しているものには聞こえているほどの精度だ。一体いくらしたのだろうか。
 そうこうしている内に目の前に帝国兵士が数名歩いている、まだこちらには気が付いていない様子だ。


 先行しているレイとアデルが同時に一番近い二人に切り掛かる、お互い一撃必殺を心掛けて自身の刃を振るう。その後方、すれ違いざまにガズルとギズーが飛び込んだ。
 先日の戦闘で見せた重力爆弾を即座に作り出し敵中央へと放つガズル、すかさずギズーが譲り受けた銃の威力を確かめるべく背中から取り出して初弾を装填する。今彼が込めた弾丸はカルナックによって生成されたエーテル弾。法術が一切使えないギズーにとっては有り難い代物だ。

 グリップの前方に付いてるレバーを回転させながらくるりと回し装填し狙いをつけてトリガーを引く。轟音と共に発射された弾丸はまっすぐに敵中央、重力爆弾によって一か所に集められた帝国兵へと飛んでいく。着弾、ここでこの弾丸の真価が発揮される。着弾するのと同時に封じ込められたエーテルが起爆し周囲のエレメントの中で一番強いものを巻き込む。この場合は氷のエレメントが豊富にあるため着弾したところから半径五メートルを一瞬にして氷漬けにする。思わずギズーは声を荒げた。

「ひゃー! たまんねぇなコレ!」

 しかし今の轟音で此方に注意が引き寄せらえてしまう、だがそれも彼等五人として有り難い話なのである。バラバラに狩るよりは一度に複数を同時に狩った方が効率は良い。並の帝国兵士では彼らに傷一つつけることは出来ないだろう。雑兵だらけのこの戦場で彼等は文字通り蹂躙する。